まるちゃんと記憶の香煙
「記憶の香煙」
・・・・・・あちらこちらでこれまで目玉焼きとトースト、クロワッサンとキャフェ・オ・レの無数の朝食をとってきたはずなのに、それらからはどうして一杯の支那粥ほどに記憶の香煙がたちのぼってこないのだろうか?・・・・・・
開高健著「もっと遠く!―南北両アメリカ大陸縦断記・北米編 (下) 」より
北極圏のアラスカ州、東海岸のマサチューセッツ州、西海岸のカリフォルニア州、と引っ越しを繰り返してきた。
その度に不要と思い切って捨てたもの、売ったもの、あげたものは数知れない。
でも、いつも手元に残して連れまわしている文庫本がある。
開高健さんの釣魚紀行シリーズだ。
引っ越しが決まる度に、今度住む場所は出てくるだろうか?とページをめくってみる。
新しい土地に慣れた頃にまた取り出してみる。
アラスカはキングサーモンがいるから当然としても、ケープコッドにも、サンタバーバラにもはるばるやって来られているので嬉しくなってしまう。
あれを食べ、これを見物し、言葉に残した開高さん。
私が普段見慣れた風景を、鋭く鮮やかに描き出してみせるその筆力、観察力。読後に心が沈まないところもいい。
楽しみなのは、その土地で食べたおいしいものの話。
サンタバーバラではどうやらキャブリロストリート沿いのレストランで、シーフードに舌鼓を打ったらしい。
どのお店なんやろなあ。
さて、この「まるちゃんと記憶の香煙」コーナーでは、食べ物自体というよりも、ある物を食べたときに煙のようにゆらりと心に浮かぶ、数年経っても残っている記憶を書き留めたい。
ゆらり ゆるりと お付き合いのほどを・・・。
2002/11/13