まるちゃんがアラスカで出会った人物 スザンナさん


まる栗メインメニューへ ◆ アラスカもくじへ ◆ 人物もくじへ


私がアラスカに来て少ししたころ、英語を教えてもらう代わりに日本語を教えるという約束で、火曜日と木曜日の午前中、週2回会っていた、一つ年上の白人女性。

スポーティで、チャーミングで、勉強熱心、という印象。日本語を勉強して1年目。カリフォルニア出身。

結婚式の時の写真には、両家の両親に加えて、それぞれの再婚相手も写っていて、親だけでも8人、というものものしさだった。その中の、かちっとしたスーツを着たやせ気味の白人女性を指して、

「この女性は元モデルなので、この写真を撮るときも写真屋さんの指示は無視して、こういう風に立つと美しいのよ、などと言って、大変な気取りようだった。私はこの人は気に入らないのだ」

と、その時の様子を再現しながら説明してくれた。

カリフォルニアに住んでいる義母と、かなり頻繁に文通をしていて、その義母は猫が好きなので、猫のイラストつきのカードを買いに出かけるのに私もついていったことがある。

夫がカリフォルニアで仕事をすることに決まって、スザンナさんも一緒に帰ることになって、引越しするが、観葉植物が何鉢かあるのを引き取ってくれないか、ついでにアメリカ料理をごちそうする、と言われて、スザンナさんのアパートに行った。

それはクリーマーズフィールドの向こう側にある、木目調の落ち着いた雰囲気がする団地の2階の一室で、ベランダでかわいいかわいいリスが走り回っていた。
リビングにはステアマスター(室内歩行器具)が置いてある。自転車こぎは退屈で仕方ないが、これは本を読みながらでも楽しめるのだ、という。

全体にシックで落ち着いた雰囲気のアパートだったが、バスルームだけが例外だった。
スザンナさん本人が「バスルームは思い切り派手にした」と言うだけあって、大きな鏡、天井、便器、すべての空間に星や月、かにや貝などの形の飾りが貼り付けられたりぶら下げられたりしていて、明るいパステルトーンのカーテンがシャワーとの境にかけられていて、その一室だけが別世界だった。

カリフォルニアにいたときは、近所に日本料理店があって、寿司をよく食べに行った。

私が遊びに行った日は、典型的なアメリカ料理だと言って、キャセロールというものをご馳走してくれた。
キャセロールには、一つ鍋のごった煮で、赤、黄色、緑の色とりどりのピーマン、なすび、たまねぎ、トマト、にんじん、マッシュルーム、ズッキーニなどの野菜を炒めたものに加えて、クスクスという、ひやきようがんに似た小さな粒々を煮たものも入っていた。
クスクスには薄くカレー味もつけてあった。それを炊飯器ほどの大きさの壷に入れて、そこから小皿に取り分けてくれた。クスクスの少しザラリとした舌触りが珍しく感じたが、おいしかった。
下ごしらえはすでに済ませてあったが、作り方を教えて欲しいと言ってあったので、炒めたり、煮たり、味付けをしたりするのは目の前で見せてくれた。

料理を教えるのは初めてらしく、大変興奮した様子で、何やらしゃべっては、「ああ、ひとりごと言っちゃった、恥ずかしい・・・」などと言って、ほっぺたを押さえたりしていた。

スザンナさんの所にあった観葉植物のうち、葉っぱだけしか生えない3鉢をもらってきたが、冬休みに日本に帰国している間に、大学の研究室に置いておいた分が寒さのためにほとんど枯れてしまった。
アパートでバケツに水を入れた中にツルを浸しておいた分は無事で、水をやるだけでどんどん伸びて、1年後の今では始めにもらってきたときの2倍は大きくなってしまった。

96年クリスマスカードは返事が来た。
フルタイムの仕事をしているらしいが、日本語を勉強するために、また大学に戻りたいと思っているそうだ。

まる栗メインメニューへ ◆ アラスカもくじへ ◆ 人物もくじへ