フェアバンクス日記    1月−2月のアラスカについて

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ダイヤモンドダスト

朝に出ることがあります。
とても小さく鋭い棘のような、キラキラするものが、たくさんたくさん空気中に飛び回ります。
天気のよい日でないと、反射しないので見えません。

オーロラ

現地では「ノーザンライツ Northern Lights」と呼ばれていて、夜9時頃から夜中2時ごろまでがよく見える時間帯です。

真上から北の方角にかけてよく現れ、何分かごとに出たり消えたりを繰り返し、形と場所と色を秒単位で刻々と変えます。
空はプラネタリウムの様にほとんど360度見え、オーロラは巨大です。
長さは南中時のオリオン座から北極星までのこともあり、青白く発行している緑色の龍がうごめいているように思えます。
真下から見上げると、コロナ状に光が中央から噴き出ています。

遠くにあるときはぼやけていますが、真上だと、何もない空間からじんわりと光がにじみだして来て、次の瞬間、非常に鮮明に輝きます。
雲とはまったく違っていて、このオーロラに似ているものは他に考え付きません。

これだけは、写真やビデオで見て想像しても、その大きさや色の変化を目の当たりにした時の感動は得ることができないでしょう。


景色

フェアバンクス空港に着いて、まず思うことは、「白い」です。道路と滑走路以外は、走っている車も霜だらけで、上に雪を積んだままだし、とにかく雪がないところはありません。道路に沿って、除雪された雪の山が延々と続いています。

道路沿いの景色はだいたい同じで、なんにもありません。
遠くに山脈が見え、ビルといっても3階建てぐらいなので本当に空が広く感じます。

気温

電話で844と押すと、時間と気温を英語で教えてくれます。

町には電光掲示板があり、同じく時間と気温がわかりますが、すべて「華氏」(−38゜Fと書かれる)です。
だいたい華氏マイナス35度から華氏マイナス5度(摂氏マイナス40度から摂氏マイナス20度)のことが多い。

たまに、とても暖かい日があり、華氏プラス37度(摂氏0度)ぐらいです。
驚いたことに、いきなり半袖半ズボンで登校する人がいます。
確かに0度だと暖かく感じます。乾燥していて、風が吹かないからだと思います。
でも雪は全然溶けません。

河は凍っていて、しかも上に雪が積もっていて、スノーモービルという雪用バイクが通った後がたくさんついています。
車が通ることもできるらしいです。

気温が摂氏マイナス30度位になると鼻毛が凍り、10分も経つと露出している肌が痛く、口から息を吸うと必ず咳が出ます。
マイナス40度以下になると、身の危険を感じるような寒さです。
暖房の効いた室内でも、窓に冷凍庫のような霜が成長します。
1月が一番寒くなることが多いです。

下の英文は、99年1月のフェアバンクスの天気予報です。

SPECIAL WEATHER STATEMENT
NATIONAL WEATHER SERVICE FAIRBANKS AK
500 AM AST TUE JAN 26 1999

...MAJOR COLD SNAP IS ON THE WAY FOR INTERIOR ALASKA...

THE COLDEST WEATHER IN FIVE TO TEN YEARS IS APPEARING MORE AND MORE LIKELY FOR MOST OF INTERIOR ALASKA LATE THIS WEEK AND INTO EARLY NEXT WEEK.

HIGH PRESSURE BUILDING OVER THE BERING SEA WILL ALLOW VERY COLD AIR THAT HAS BEEN OVER THE ARCTIC OCEAN NORTH OF ALASKA TO POUR SOUTHWARD OVER THE REGION. COMBINED WITH CLEAR SKIES.. TEMPERATURES WILL DROP TO LEVELS COMPARABLE TO THOSE OBSERVED IN LATE JANUARY AND EARLY FEBRUARY 1993..AND POSSIBLY APPROACHING THOSE OF LATE JANUARY 1989.

TEMPERATURES IN THE 60S BELOW ARE LIKELY ON THE YUKON FLATS AND IN SOME VALLEYS IN THE KOYUKUK AND UPPER KOBUK BASINS BY FRIDAY NIGHT AND WOULD PERSIST UNTIL AT LEAST MONDAY. TEMPERATURES IN THE 50S BELOW ARE LIKELY IN THE LOWER YUKON VALLEY..ESPECIALLY NORTH OF GRAYLING. IF THE CURRENT LONG RANGE COMPUTER FORECASTS ARE SUBSTANTIALLY CORRECT..THE COLDEST PLACES WILL SEE TEMPERATURES LOWER THAN 70 BELOW SATURDAY AND SUNDAY.

RESIDENTS OF NORTHERN AND WESTERN INTERIOR ALASKA SHOULD PREPARE NOW FOR AN EXTENDED PERIOD OF DEEP COLD THAT MAY SERIOUSLY DISRUPT AIR TRAVEL.

IN THE TANANA VALLEY...TEMPERATURES WILL BE STRONGLY DEPENDENT ON HOW MUCH CLOUDINESS REMAINS OVER THE AREA FROM A PERSISTENT STORM IN THE NORTHEAST GULF OF ALASKA. IN THE ABSENCE OF CLOUDS..TEMPERATURES OF 40 TO 65 BELOW ARE LIKELY THIS WEEKEND. IF CLOUDS PERSIST..TEMPERATURES WOULD BE 10 TO 30 DEGREES HIGHER.

IN THE FAIRBANKS AREA..DEEP COLD WILL BRING DENSE ICE FOG. TEMPERATURES IN THE URBAN AREA ARE MODERATED BY THE ICE FOG..BUT TEMPERATURES LOWER THAN 50 BELOW IN TOWN ARE LIKELY THIS WEEKEND IF CLOUDS FROM THE STORM IN THE GULF OF ALASKA MOVE OUT OF THE AREA.

RESIDENTS SHOULD MAKE PREPARATIONS NOW FOR AN EXTENDED PERIOD OF DEEP COLD.

乾燥

寒さより、乾燥に悩まされます。
男女に関係なく、リップクリームやベビーオイルを塗らないと、食事後などはすぐ唇がパサパサになります。
クリームなしで外出すると、唇がひび割れてきます。
鼻血もブーです。
夜、洗濯をして、部屋の中に干しておくと、ジーンズなども朝には乾きます。
乾燥するのは空気中の水分が凍ってしまうためです。

服装

建物の中はトレーナーにジーパンか、Tシャツで大丈夫です。はんてんを持っている人はいません。
外に出る時は、ババシャツ、トレーナー、分厚いトレーナー、ダウンコート、耳あて、毛糸帽子、分厚い手袋、パンツ、分厚いタイツ、毛糸靴下、ジーンズ、底のでこぼこした靴(すべるから)、これだけあれば、摂氏マイナス40度でも、寒くありません。
気温が低い時は、建物の中に入るたびにコートや手袋を付けたり外したりしないといけないのがめんどうです。
毛糸のセーターは手洗いが大変なのとトレーナー2枚で充分なのとで、ほどんど着ません。

結構日本車が多いです。
ほとんどの車の窓に霜がびっしりついています。その上、大変古く見え、大抵どこかがへこんでいます。
タイヤは雪用に溝が深くなっているので、チェーンをつける必要はありません。

駐車場にはバックで入れる車はほとんどありません。
車の前のバンパーの辺りにプラグが付いていて、コンセントをつなげる穴が各駐車場スペースにあり、長時間駐車する車はエンジンが凍ってしまったりバッテリーが上がったりするのを防ぐために、コンセントをつなげてとまっています。
これは華氏マイナス0度以下の時のみ電流が通るそうです。

道路

気温が低い時の道路には、約20センチの高さまでドライアイスのような煙が漂っていて、車が通るとフワフワぐねぐねと動きまわります。
もっと気温が下がると辺り一面に霧が立ち込め、その上、車の排気ガスもやけに白くなるので、すぐ前の車の姿も消えてしまいます。

街灯はなぜかすべてオレンジっぽい光なので、街全体はセピア色に見えます。
そして、あらゆる道路にはスピンを防ぐため、たくさんの小石がまかれています。
ちょうど神社の境内の小石ぐらいの大きさで、徒歩だと靴の底の隙間に入って、玄関口が小石だらけになります。
この小石がフロントガラスに当たってヒビ入っている車は多いです。

電車

アラスカ鉄道が一本有りますが、めったに通りません。
冬は一週間に一回しか運転しないそうです。

交通手段はもっぱら車かバスです。
道路がないところに住んでいる人は、車に翼を付けたほどの大きさしかない小型飛行機を使います。

き〜

見渡す限り同じ種類の木が立っています。
細長いクリスマスツリーのような木で、針葉樹です。スプルースという名前です。
よくよく見ると、他に2、3種類の木があり、ほとんどが白樺で、雪のせいで重くしなって折れそうです。

「樹氷」はめったに見ることはできません。
すべての木に山のように雪が積もっているからです。
まるでカリントウのように見えます。

生き物

。足袋を履かせてもらって散歩している犬はよく見掛けますが、裸足の犬も結構多いです。ハスキー犬もよくいます。

。一匹もみたことがありません。

レイブン(RAVEN)
。レイブンという、大きなカラスがいろんなところを飛んでいます。カラスとは泣き声が違い、その姿からはとても信じられないようなかわいい声です。ポッコン ポッコン、というふうに聞こえます。

リス
。大学の道路を横切ったのを見ましたが、よく車にひかれてしまうようです。 リスの絵

ムース
。アラスカでは熊よりも危険だと考えられています。少し前には、うっかり親子のムースの間に入ってしまった人が殺されたそうです。これはアンカレッジの大学構内で起こった事件で、野生のムースがその辺をうろうろしています。茶色い牛に大きな角が生えたような姿で、鹿のように角が枝分かれします。メスには角がありません。丸太作りのいかにも「アラスカ」という雰囲気の建物には、たいていドアの上にこのムースの角が飾られています。

。一匹もいないように思えます。ゴキブリもいません。ハエもいません。あらゆるものが乾燥しているので、カビも生えにくいようです。夏は恐ろしい程の蚊が発生しますが、冬は想像すらできません。

人種

もともとアラスカに住んでいた人々は「ネイティブ」と呼ばれ、エスキモーや、ユピック、アスバスカンなどのいくつかの部族があり、それぞれの部族が独自の文化や言葉を持っていますが、大学で会うこれらの人々は、特に目立ったところはないように思います。黒髪、黒瞳で、肌も日本人と同じです。

アラスカ大学に来ている生徒や教授の多くは、他の州や国から来たようですが、皆英語で話します。
黒人や白人だけでなく、アジア系の人も多いです。
白人といっても、真っ白な肌で金髪の人はほとんどなく、髪の色も茶色や黒です。
結構多いのは、中国人とロシア人で、日本人には滅多に会いません。

すぐに同じ国の人間同士でかたまるのは、日本人の悪い癖と思っていましたが、見ていると、それは日本人に限ったことではないようです。

食べ物

食料は週に1、2回、車で10分ほどのスーパー「フレッドマイヤー Fred Mayer」へ買い出しに行きます。
スーパーはでっかいトイザラスといった雰囲気で、人々は買い物かごではなく、手押し車に山盛り買っていきます。
例えば、牛乳は一本が約4リットルですが、それを2本、パンを2斤、じゃがいも1袋(12、13個)、デコレーションケーキ一個などなどをどかっと買うわけです。

フェアバンクスならではの食べ物では、ポットラックパーティ(持ち寄りパーティ)でたまに出てくることがある、ムースやカリブー(トナカイ)の焼き肉や、鯨、道端で摘んだブルーベリーを使ったパイ、夏の間に釣って薫製にしたスモークサーモンなど。
ムースもカリブーもシカ科の動物なので、肉に変なにおいがあります。

レストランで出てくる料理は、どれもこれも巨大です。

スキー

フェアバンクスは盆地なのでダウンヒルスキーをするには遠い山まで行きますが、それにはリフト代もいるので、大学内の林の中へクロスカントリースキーをしに行く人が多いです。

このクロスカントリースキーは、平地を早歩きするスキーで、板はかなり細長く軽いものを使います。
板の中央に体重を乗せると滑らないようにできていて、この部分で雪を蹴ってすすみますが、山を滑り降りるわけではないので、非常にゆっくり進みます。
道の端にはパラレル用の溝がつけられていて、その溝にスキー板を合わせると、よそ見しながら滑ることができます。
道の中央は荻原選手がしていたノルディック用になっていて、そこを滑っている人はかなりうまいです。

大学の中の林は広大な土地面積があり、1時間ぐるっとまわってもまだ元の位置に辿り着きません。
林の中には、日本の高校の運動場の6倍くらいの大きな湖もあります。
冬は凍って上に雪が積もっているので、この湖の上も滑ることができます。

林の中には野生のムースがうろついていて、雪の上にチョコボールのような糞が落ちています。
うっかり近づかないように、気を付けながらスキーをします。

夕方4時過ぎには暗くなってしまいますが、林の中のスキーコースは夜9時まで街灯がついています。
ところどころ街灯のないコースもあり、月明かりの中滑るのは最高です。
オーロラを見ながらスキーを楽しむのも非常に不思議な体験です。

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