まるちゃんとアラスカ
「毛深きもの、汝の名は・・・」


マスク・オックス Muskox。

氷河時代からほとんど進化せずに生き残ってきた種族。

極寒の環境に耐えられるよう、毛皮は地面すれすれまで伸びる。
さらに、外側の長く黒い剛毛の内側には、薄茶色の柔らかい毛が生えている。
この内側の毛は、 Qiviut と呼ばれ、
クィビットだかキビュットだかキビットだか、まるちゃんには発音不可能な名前。

マスクオックス自体の数が少なく、
さらに1頭から採れる内毛はちょびっとで、
しかもカシミアのような肌触りで暖かいので、
「世界一のレア物毛糸」らしい。

写真1枚目は、アラスカ大学のラージ・アニマル・センター(大型動物研究所)で生まれたばかりの、マスクオックスの赤ちゃん。
餌をやっているのは末妹。
ここでアルバイトをしていたお父ちゃんの同僚が、アラスカへ遊びにきた妹達を案内してくれたのだ。

この後、キビットをひとつまみ、お土産にプレゼントしてくれた。(写真2枚目↓)
ジップロックに入れて持って帰ったけど、税関では見つからなかったので、取り上げられなかった。
なんだかちょっと臭いような、どうしていいかわからないような、めずらしいものだった。

マスクオックスの肉。
滅多に手に入らないわけで、珍味らしい。
当然まるちゃんは食べたことなし。
羊やヤギの仲間らしいので、ちょっと臭みがあるのではなかろうか?

雄は300キロ前後に成長する。
別にじゃ香の香りがするわけではなく、普通に動物くさい。

交尾期の雄の決闘は、すさまじい迫力だとか。
全力で走って、正面衝突の頭突き。何度も何度も・・・。
その衝撃の音は、1マイル先まで響き渡るほどだという。

で、こんなに頭突きを繰り返してたらやばいわけで、ちゃんと脳を守るために、角と額の骨が合わせて20センチほどの厚みに発達している。

マスクオックスは、群れを作る。
70頭以上の群れになることもあるそうな。

この草食動物は、外敵に対してすこぶる戦術的な守りをする。

一匹の敵ならば、一列に並び、正対する。
狼のように群れで狩りをする敵ならば、ぐるっと円に並んで、頭を外に向ける。

白い鼻息を一斉に吹き出しながら、ずらりと並んだマスクオックスの群れ。
まるちゃんはポスターでしか見たことないけれど、壮観だ。

でも、鉄砲の前では格好の標的にしかならなかった。
もともと氷河時代からアラスカにいた系統は、乱獲がたたって1800年代にほぼ絶滅。

現在アラスカにいるのは1930年代にグリーンランドから輸入したものらしい。
ベーリング海に浮かぶヌニバック島 Nunivak Island に沢山いるそう。



重厚な戦士を想わせるマスクオックス。
北の大地で生き抜いてほしい。



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2002/11/5作成